残留農薬の個別分析への関心の高まり

現代社会における生活において、農薬の必要性については決して否定することはできません。蚊やゴキブリなどを退治するのに有効な殺虫剤や蚊取り線香はもとより、除草剤や防ダニ剤などに至るまで、農薬成分の恩恵を受けています。

しかしながら、同時に残留農薬のリスクに直面していることも事実。残留農薬の詳細を明らかにする個別分析が期待を集めるのも最近になってからのことです。詳しく見てみましょう。

⇒根の部分には比較的少ない残留農薬

そもそも残留農薬とは?

残留農薬の個別分析にまつわる話題があちらこちらで取り上げられているのは、それだけ多くの人が関心を寄せているという事実を物語っていると言えるでしょう。そもそも、残留農薬という言葉を聞いただけで、その内容を的確に把握している人自体が少ないのかもしれません。

ほとんどの人が、「なんとなく聞いたことがある」や「言葉を知っている程度」というのが現実ではないでしょうか。体に良くないことや食を脅かす存在などといった漠然とした理解のみならず、しっかりと内容まで把握しておきたいものです。

残留農薬と一口にいっても、その詳細は実に多岐にわたることで知られており、抗菌剤や植物成長促進剤、殺虫剤や除草剤などが代表的なものとして有名ですが、これら以外にもたくさんの種類があります。日本国内で登録されている農薬成分だけでも520種類前後はあるとされており、登録されていないものを加えれば倍以上という数にものぼります。

これらの農薬成分のうち食品や環境に含まれているのが、残留農薬です。明確な定義があるわけではありませんが、一般的な見解としてはこのようにいうことができます。

身近に潜む残留農薬

「農薬は農家だけが使うもの」や「一般家庭と農薬は無関係」などといった先入観を持っている人は多いのではないでしょうか。確かに、農薬散布といえば、果物や野菜などの栽培のために使うというのが一般的な理解であることは間違いありません。

しかしながら、現実的には一般家庭であっても、農薬をまき散らすというリスクを持っていることも事実です。主に夏場を迎えると活躍することになる家庭用殺虫剤をご存知の方も多いでしょう。この家庭用殺虫剤の中にも、農薬と同様の成分が含まれています。

例えば、独特の煙で蚊などを退治してくれる蚊取り線香に含まれる「アレスリン」という成分も農薬の一種です。いずれも、その成分があるからこそ、害虫などの被害から食べ物や人間の体を守ってくれているのも現実ですが、一方では残留農薬というリスクも持ち合わせていることを忘れてはいけません。

草むしりが面倒となる庭先や駐車場などでは、威力の強い除草剤を使う人も多いですが、これにも農薬が含まれています。また、トイレやキッチンでもお馴染みの「殺菌・抗菌剤」入りの洗剤も同様です。加えて、もはや家族同然に可愛がられる犬や猫などをダニなどから守るために使われる防ダニ剤にも多くの農薬が含まれています。

個別分析への期待感が増すことに

残留農薬に関する被害やリスクへの関心が高まったことで、分析することの大切さや重要性についても大きくクローズアップされるようになってきました。残留農薬の分析方法として、一斉分析と個別分析とがありますが、二つの分析方法を効果的に組み合わせて活用することが、より求められていると言えるでしょう。

「ポジティブリスト制度」という制度を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、内容をわかりやすくいえば、日本国内で生産されるものはもとより、輸入品においても含まれる農薬成分が一定基準を超えてはいけないというものです。

それまでの無制限という事態を改めることで、レタスやホウレンソウなど輸入に依存する割合が多い野菜も安全性が増すことになりました。ポジティブリスト制度が施行された2006年度以降は、それまで以上に食の安全が重要視され、残留農薬の個別分析にも熱い視線が注がれるようになったといえるのではないでしょうか。

具体的な例を挙げれば、アボカドやニンジン、オクラなどに含まれる「メタミドホス」をはじめ、レタスやキュウリに含まれる「クロロタロニル」、米の「カズガマイシン」などと対象の物質は多岐にわたっています。

精度と品質が求められる個別分析

食に対する安全へのこだわりが増すことにより、個別分析への期待が増していることは純然たる事実です。とりわけ近年では残留農薬の個別分析を行う企業への関心が増しており、多くの問い合わせや依頼があると言われます。

ネット上などでは、個別分析を行う企業のホームページや運営するサイトなどへのアクセス数も増加中です。申し込み方法などについても至って簡単と言えるでしょう。パソコンなどを使って注文書をダウンロードして、必要事項を入力して送信するだけという気軽さです。

特別な資格やスキル、テクニックなども一切必要ありません。申し込みが済めば、後は連絡が来るのを待っているだけで良いのです。一方、残留農薬の個別分析をサービスとして行う企業には、正確な分析結果を提供することが求められます。

通常の農家や酪農家などでは到底できないような環境の下で行われる測定結果を明確に打ち出すことが必要です。もし、そのデータの抽出方法やデータ自体に問題があれば、たちまち信用を失うことになります。

食の安全を保つために

先述した通り、2006年に導入されたポジティブリスト制度以降、残留農薬に人々の厳しい目が向けられています。そして、それは同時に農家や酪農家などにとっての確実な衛生管理の必要性につながっていると言えるのではないでしょうか。

一斉分析や個別分析が注目されるようになったのも、このような流れに起因していることは間違いないと言えそうです。それまでにも、一斉分析や個別分析といった分析は行われていましたが、どことなく内容的には不十分という声や意見があったことも事実。

形式的なものに終わっていたという感も否めませんでした。しかしながら、そのような事態に変化をもたらすことになったのも、ポジティブリスト制度です。農薬は殺虫や殺菌、除草などといった人間をはじめとした生物の活動にとって必要不可欠な役割をもたらす一方で、長期間にわたり有毒性を持った状態を保つという負の一面も持ち合わせています。

そのような実態を数値化して対策を講じることの重要性は改めて説明する必要もないでしょう。個別分析をすることが何よりも近道です。

参考情報「QSAI - 日本食品センター
https://www.nouyaku-bunseki.net/